人知れず

百姓のたのみの水や残る鴨

山から沁みだした水を引いている。

本格的な田植を前に今は水をためる時期。下の田に十分な水を届けるには、梅雨入りを待たねばならぬほど水の乏しい盆地にはこのような溜池があまたある。崇神天皇陵濠などは、その後手を加えられて今では堂々とした農業用水池となっているほどだ。
わが菜園に流れてくる水もここの池を水源としていて、どんなところか見たくて来てみたが一羽の鴨が浮かんでいた。杉菜の子の宝庫であるここは一般の人はこない。あの鴨は人知れずここで命を終えるのであろうか。

“人知れず” への2件の返信

  1. ため池というのはあまり見たことがありませんが水の恵みの少ない地方では必要不可欠なんでしょうね。
    残された鴨は渡り損ねたのでしょうか?
    気がかりですね。

    1. 鴨というのは群または番でいるのが普通で一羽だけというのは珍しいです。帰る体力のないのかもしれないと思うと哀れです。
      俳句には「雁風呂」「雁供養」という春の季語があって、青森外ヶ浜あたりでは流木など落ちている木を集めて風呂をたいたという言い伝えがあります。これは、渡りの鳥は北からの長旅を洋上で羽根を休めるため咥えてきた木片を陸に落とし、また春にはそれを咥えて北へ向かうという。多く残った木片は、命を落としたなど何らかの理由で帰れなかったものたちのものであろうと、それを哀れんで供養のために風呂を沸かしたのだという。
      いかにも哀れをさそう季語です。

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