万緑や耳は獣におのずから
定例の句会に先だって宇陀の棚田に立ってみた。
水の音、風の音、そして鳥の声。
棚田の奥には通称「大和富士」こと「山」の文字の形をした「額井岳」が見える。水はこの山からの引き水だ。
山の水には蛍が生息し、この水路伝いに時鳥が行き来する、かけがえのない環境。どこを向いても山に囲まれて、緑、緑、また緑の世界だ。
目を閉じて、全身耳になったつもりで外界の音に全神経を澄ますと、原始の人間になったような不思議な感覚に襲われるのだった。
視覚、聴覚さえあれば触角、嗅覚、味覚はなくとも人は自然に帰れるかもしれない。