巧まざる美

丈低きものらすべたるうしはこべ

冬の間地面を這いつくばっていた草たちがどっと起きてきた。

おおいぬのふぐり、たんぽぽ、ほとけのざ、姫踊り子草、などなどどれも花をつけて我が世の春を競うようである。カラフルで野が巧まざる美にあふれているようだ。
なかでもはこべはすっくと伸びて、白い花を誇らしく突きだしている。それぞれが混じり合って咲いているなかにあって、ひときわ背が高いので春の野道の代表みたいな雰囲気をまとってもいる。
はこべが咲く土は何でも育つと言われ、そういう意味でも春の野草の筆頭であろうか。
葉は兎とか鶏の餌になるし、また干せば薬用、それに春の七草のひとつと昔から庶民の馴染みでもあろう。

味方

U字溝野道はさみてうしはこべ

ひょろひょろと、しかし意外にしたたかに伸びている。

イヌフグリもハコベも、気をつけていないと見逃してしまう雑草だが、これらが生う場所は自然がゆたかな証拠であることを忘れてはならない。地味が豊かであると、萱や芒などは生えてこないのだ。ハコベは農の味方でもあるのだ。
ただ残念ながらそういうゆたかな自然に無機物が縦横に進出して味気ないものにしてしまった。
それでも雑草はたくましい。コンクリートの側溝にたまった土砂などにしっかり根を下ろしている。