旅の一夜

取り分けて訛聞かせてきりたんぽ

黄金の田が一面に広がる頃決まって思い出す。

秋田路へは小町出身地と言われる雄勝町に入ったときのことだ。
おりしも盆地はどこまでも黄金色で、国道沿いには深紅の林檎が薄く粉を掃いたように鈴生りになっている。まさしく豊の秋であるが、その夜は角館の宿に一泊。
比内鶏、そして天然の舞茸を使った本場の豪勢なきりたんぽに舌鼓を打った。
小皿に取り分けてくれる仲居さんは、鍋の蘊蓄やら秋田音頭にでてくる秋田名物やらの話を訛たっぷりに面白おかしく聞かせて実に愉しい一夜。
仕事で出かけたのでのんびりという風にはいかなかったが、その夜のことは一生忘れられない旅の記憶につながっている。
掲句は、兼題「きりたんぽ」で今日の句会に出句したものの一部。