山草の宝庫

ダム堤の高き低きをつばくらめ

今年は燕が極端に少ない。

早ければ2月末には大和川から侵入するのを目撃するのであるが、家の近くでもさっぱりみない。
どうしたのかなあと思っていたら、過日訪れた崇神天皇陵の濠を縦横無尽に飛び交っている燕が初燕であった。
ここは前にも書いたように江戸時代に改修されて大きな用水池となったところで、濠の高さが十メートルもあるような天皇陵は他に見たことがない。まるでダム湖である。
今日も訪れてみたら禁制の柵を越えて草を摘んでいるグループがいた。
とうに時期を過ぎた土筆ではなく、蕨採りのようである。頭上行き交う燕には目もくれずポリ袋が大きくふくらんでいた。

家づくり

つばくらめ更地の泥を集めんと

古い家並みの一画が更地になった。

新しい家が建つ気配もないところ、雨でぬかるんだあたりに燕が近づいた。
着地こそしないが、せわしく羽ばたきしながら泥の様子をうかがっている。どうやら巣作りが始まったらしい。
あたりは昔ながらの家が多く、巣作りにも適しそうな家がごろごろある。
さて、どこの軒裏に狙いを定めたのであろうか。

帰って来いよ

軒の品定めもしたりつばくらめ

番がしきりに声を交わしている。

交わしては、また農家の軒に飛び込んで元の電線に戻ってくる。
どうやら、巣作りに適しているかどうか各家の軒を調べているようである。
家によっては、風にキラキラ光るディスクを吊してあるところもあるが、燕はあまり気にしないようである。むしろ、カラス除けのお守り代わりになるのかもしれない。
近所にも二三日前飛んできたグループがいるので、さて居着いてくれるかどうか。
去年まで雲雀が降りていた宅地にとうとう建て売り物件ができてしまって、今年は雲雀君の声も聞こえなくなって淋しいので、燕君たちが気に入ってくれるといいな。

ベビーブーム

建売の軒という軒つばくらめ
鎌使ふ背に聞こゆるつばくらめ

どうやら、雛が孵ったらしい。

親鳥が巣の近くに来ると、いちだんと賑やかな声が聞こえてくる。今が燕のベビーブーム第一波らしい。あと、一二度繰り返しては初秋に帰ってゆくのだろう。
そう言えば、今朝隣の空き地に雲雀の番が遊んでいた。何日か前に、雲雀たちがよく降りる、数軒離れた畑にシャベルカーが入って工事が始まったので、もういなくなるのかとがっかりしていたので嬉しい光景だ。もともと住宅街の真ん中に雲雀が出没すること自体無理があるので、いずれ頭の上で揚げひばりの声を聞くことは望めないとは思うが。