大地が光る

日の力増して影濃くクロッカス
飛び咲ける花洎夫藍に目を移す
しゃがむるに髪かきあげて花洎夫藍

クロッカスの和名は「花さふらん」である。

だから、ホトトギス歳時記では「花洎夫藍」は「クロッカス」の傍題として採り上げられている。
いっぽう、クロッカスと同属のサフランは、秋咲きであること以外に大きな差はないが紛れやすい。
地面すれすれの低い丈に細い葉を伸ばし花を咲かせる。地面から直接湧いてくるような錯覚を覚えるほどだ。球根性で手入れや鑑賞は腰を落としてしゃがみ込まなければならないが、光の強さが増してくるようになると、一斉に白や黄色が花開き地面は賑やかになる。
蕗の薹も地面にぽっかり顔を出すことを考えると、両者は大地に春が来たことを告げる先駆けと言えるかもしれない。春告げ鳥はウグイス、春告げ魚はニシンまたはメバル、春告げ草は梅とされ、いずれも春の先駆けとしての代表だが、大地に限って言えば花洎夫藍だって春告げ花なのである。

調べたら、一昨年もこの頃クロッカスの花を採り上げている。発想には進歩がなくてやれやれである。

春の色

さきがけの色とも見えてクロッカス

縄囲いしてあった。

馬見丘陵のクロッカス

そばに行くまで全く気づかなかったが、芝生公園の一画に植えてあったと見えるクロッカスの一群が今まさに黄色の蕾を開こうとしている。背は低く10センチあるかどうかなので、折からの風に根元から震えるように揺れている。
公園を見渡しても他にはまだ色といえる色は見えず、さながら春の色の先駆けのようである。