三月に一度

観念し歯科医の前にマスク取る

チェアにかけるまでマスクしている。

歯科医は無論マスクしたまま。
いよいよマスクを外してチェアに横たおるわれは、何とも無様に大口を開けてなされるままに口の中をかき回されておる。
これが三か月に一回の歯科通い。
今日は点検、掃除、フッ素を塗られて15分ほどで終わり。

病み上がり

神経の尖る病余のマスクかな

今年の一月以来にお目にかかる。

菜園のオーナーさんが姿を見せなくなって10ヶ月。
病に伏しておられると聞いていたが、このほど外出の許可も出たようでご挨拶にみえた。長い闘病で少しやつれた風に見えたのは、深い帽子に特殊なマスクをしておられるせいかもしれない。
声も抑え気味で、会話の距離もいくぶん保つようにしておられるのは、まだ完全に回復されたわけではなさそうである。雑菌に触れるのを避けるようにしておられるのだが、免疫低下などを心配されているのであろうか。いずれにしてもこれからは近くの散歩など体力回復に努められている様子である。
健康なときにはそれこそ毎日畑に出てこられて、草刈や力仕事などはご主人がサポート役に徹しておられたが、不在中はご主人がひとりでこなすものの、いろいろな種を蒔いたり苗を育てたりという細かい仕事は苦手のようで、同時に育てる種類はせいぜい三つか四つくらい。あんなにたくさん売るほど作ってどうするのだろうかと思うくらい作付けの半分をネギが占めていたりするが、おそらくほとんどを人にお裾分けすることになるのだろう。
あれこれとご主人に指示しながらせっせとお孫さんたちに送る野菜の菜園ライフを楽しむ姿が見られるのは何時になるのだろうか。

ワーストナイン

特売の店に混み合ふマスクかな

こんな時期に特売日など設けるから混む。

しかも一家一人で来ればいいのに家族連れが多い。しかも子供連れもちらほら。
アッシーできている自分もいて大きなことは言えないが、無神経な人がおおいということだろう。
単位当たりの感染者数全国九位となっても県知事は何のメッセージも発せず、他府県からくる汚染観光客から感染がどんどん広がっているのではなかろうか。
こういう非常時こそ行政トップの発するメッセージほど大事なときはないはずだが、マンボウなど効果ないと鼻で笑う姿勢にどうかしていると思う。

従順

マスクより顎はみでてる笑ひかな

マスクに季節感がなくなって間もなく二年。

家にいる時間の方がはるかに長く、滅多に人混みに出かけないのでマスクの居場所は決まっている。カギと一緒のところと決めていて、外出するときにマスク、マスクと慌てることもない。クルマで出かけるときは車内においてあるものを使う。これはちと衛生上気になるが。
スーパーへの買い出しにつきあうときなど、ノーマスクのまま店内に入ろうとして慌てて取りに戻ったりするヘマはやるが。
他人のマスク姿をみるに、当地では鼻マスクの人はまれである。ふだん行き交うのは年寄りばかりだから意外にみなさん従順に守っているようである。
たまにはマスクからはみ出るような大笑いを見たいものである。

ご自由に

除湿器にマスクの眼鏡くもりけり

診察券を出すが早いか、マスクをつける。

月一度薬をもらいにクリニックへ行くのだが、インフルをもらっては大変だから受付カウンターに「ご自由に」とあるマスクを一個もらう。日常マスクをすることはないが、都会に出たり、今日みたいにクリニックにいくときは予防のため必ず使用する。
眼鏡をしてじた時分はこれが厄介で、満員の電車、暖房を効かせた部屋などでは曇りとの戦いである。
内科クリニックでも除菌を兼ねた除湿器の白い霧がもくもくたっており、エアコンが入っていてもそれなりに湿度が保たれているから、瞬間周りが真っ白ということも珍しくない。
老眼がすすむとともに近眼が治ってきたのが不思議で、もう7、8年は眼鏡なくても不自由しなくなったから、マスクの敵はなくなったのだが。

歯は抜かずに治す

抜歯して逢わねばならぬマスクかな

昔は前歯が欠けたまま平気な年寄りを見かけたものだ。

現代にさすがにそういう人はみないのは、予防対策の普及やら医療の進歩による効果なんだろう。
ただ、歯というのは大変微妙なもので、ちょっとでも歯がかけたり、抜いたりして、それまでのそれなりのバランスがとれたりしていたものを崩すようなことをすると、それが他の歯にたちまち影響を及ぼして、まるで玉突きのようにあちこちおかしくなるところがある。
それが、また歯の問題だけではなくて、他の臓器や部位に飛び火してしまうようなことが多い。
やたら、歯を抜くのを勧める歯医者は注意した方がいい。できるだけ抜かないで対処する処置を考えてくれる医者をさがしたほうがいい。
身近に親知らずを抜かれたがためにすっかり体調を崩したものがいるので、よけいにそう思う。

買物弱者

お総菜物色をするマスクかな

家人のスーパーにつき合うのは苦手だ。

とくに、いけないのが鮮魚、肉、乳製品など要冷蔵品売場である。これでもかと低温をきかせるので、近づくだけでもう悪寒を覚えそうになってできるならその前には立ちたくはない。
夏でさえそうなのだから、冬ともなるともっとひどい。
荷物ならいくらでも引き受けるから、どうか早く済ませくれと願うばかりである。
このあたりは、スーパーも遠く車無しではやっていけないが、足のない人は電車にたよるしかなく、夕食のおかずが足りないからとちょいとそこまで下駄履きでというわけにはいかない。
今日もまたお年寄り一人がスーパーの袋をいくつも抱えて電車に乗ってきた。