濁り田にて

軽二羽のけふもやすらぐ代田かな

昨日今日と軽のつがいと思われるのが畔にまったりとしている。

本来は一キロほど下った大和川にいるのだろうが、どういうわけかこんな棚田まで上がってくるのは珍しい。繁殖の時期はもう半ばを過ぎて、卵を抱くでなし雛を育てるでもなくて、この二羽の関係がちょっぴり気になるところだ。
この田は無農薬が自慢らしいので、鴨たちも動物的な勘で安心できる水場と認識しているのかもしれないが、兼業農家の田でもあるしこの週末にはもう田植えとなろう。そうなると、また帰ってくるのか帰らないのか。それも気になるところである。

濁るまま

代田より平群へ落ちてゆく峠

久しぶりに外出すると夏の光りが眩しい。

平群の峠では早くも代掻きが終わったようで、盆地の一番載りである。
代掻きが終わったばかりの田は水を澄ませるものもなく濁りきっていて、生駒の山を映すには至らない。
苗代田には植えるのを待つばかりに苗が育っていて田植も近いのだろう。
こうして、高いところから低いところへ徐々に水田がふえてゆき、植田が広がってゆく。
あとひと月すれば大和国ン中の景色がおおきく変貌することになる。

溜池放流

池水を引いて代田の泡まみれ
水口の塗りに手練れの代田かな
星景の底に代田のあるばかり
ひとところ水漬かぬままの代田かな

貼り紙に池水解放の日にちが書いてあった。

はたして、山の池につづく急傾斜の水路をごぼごぼ音をたてながら代掻き用の水がくだってゆく。
雨の少ない盆地は例年梅雨入り頃の溜池の水を放して本格的な田植えが始まる。いまは半分ほどの田に水が張ったようだ。
田の土はこれまでたっぷり日を浴びて温度が上がっているので、代掻きが終わったばかりの田は白濁したままで泡だっている。
このあと畦塗りして、落ち着いてくると代田の水も澄んできていよいよ田植えを迎える。
今日日曜日も山の田に向かって耕運機が公道を登ってゆくのを見た。あたりはすっかり宅地化しても、昔から在の人たちがやってきたやりかたでむろんナンバーレス。なんとものどかである。