時じくの香の菓

オートドア開くやいなやに余寒いふ

寒い寒いと飛び込んでくる。

医院のなかは混んでることもあって意外に暖かい。
雨模様の日ながらそれほど寒いとは感じなかったが、体調のよくない人にとっては体にきくのだろう。
老化というのは細胞の老化。
最近録画を採って必ず見ている番組がNHK・BSの「ヒューマニエンス」。最新の科学、とくに人間に関する新しい知見が毎週えられ、知的満足感が非常に高いからとも言える。
今週のテーマは「ミトコンドリア」。20億年前にほぼすべての生命体に細胞内共生という形ですみついて、細胞の活性化、老化にダイレクトに関係する、いわば生死を司る細胞らしい。ミトコンドリアが傷ついたりして劣化が進めば、それはすなわち老化を意味すると。
意外なものに人間の生死が操られているというわけだ。最近この傷ついたミトコンドリアをきれいに処理して細胞を若返らせる物質が発見されたとも。研究が進めば、これぞまさしく「不老不死の薬」になるかもしれない。逆に言うと「死にたくても死ねない」時代が来るかもしれないのである。現代版「時じくの香の菓」であるが、考えれば恐い話しではある。
再放送は、BSの2月28日(水) 午後五時から。興味ある方はご覧あれ。

そこはかと

時差式の信号長き余寒かな

まさに今このときが三寒四温というのだろう。

明日から二三日は暖かくなっても、その後にまた寒さが戻ってくる。
トレンドでは底を切り上げながら右肩上がりに気温が上がってゆくにしても、行きつ戻りつのサイクルが今年ほどはっきりしている年は珍しいかもしれない。
春になってもそこはかとなく残る寒さを余寒というが、気をつけてみればあちこちに見られるのかもしれない。
たとえば、飛鳥寺へ通じる一方通行路。時差式の信号で止まれは4分、ゴーは30秒。一方通行区間が長いためだ。循環バスが通る道だからこその対処だが、待っている時間がほんとうに長く感じられて寒さがよけい身に沁みてくるのだ。

すくむ

熱き茶に喉奥むせぶ余寒かな

しばらく息ができなかった。

苦しい時間がちょっとあって、嚥下不全というべきか、茶さえ簡単に飲み干せないのはやばいぞと思う。
餅などを詰まらせて亡くなることがあると聞くが、いままでは他人事のようにとらえていたのが、それに近いトラブルが現実にこの身に起こってみると間違いなく死は近くにあるのだと悟る。
オミクロンによる死者の多くが70歳以上というデータがあるが、今自分が感染すればまさしく死は免れない、そんな位置に自分はいるのだと厳しい現実に身がすくんでしまうのである。

寿命

足首に靴下よれる余寒かな

くたびれた靴下がずれてくると足首が寒い。

僕はいったん気にいると、もう寿命だと思っても最期のボロになるまで着古すまで着てしまう傾向があるようだ。
とくに顕著なのがTシャツである。布地など素材からくる肌触りのよさ、タイトでもなくルースでもない調度いい加減のサイズ、伸びたいときに伸びて元にもすぐ戻る柔軟性とと弾力性、これらが気に入るとそれこそ外へ着て出られないほど着倒すのである。最期は雑巾にも使えないくらい。
Tシャツなどは何枚も買ったが、今まで気に入ったものはおそらく2、3枚だろう。ほとんどは一回着ただけで箪笥の中に寝ているものが多い。
今日の靴下も今シーズンフルに履いた。さすがにそろそろ寿命かな。

時雨雲

ごみ出しを鴉見下ろす余寒かな

今日は何度も時雨雲がやってくる。

もう少し冷えたら雪の雲である。
来週はまた暖かくなると言うから、今年はとうとう雪を見ずに春を迎えそうである。
なんか嬉しいやら淋しいやら。

歌垣

駐車場満車と灯る余寒かな

昨日ほどではないが今日も寒かった。

寒くて曇りだから、今日も花の色はさえない。
だが、樹形の素晴らしい梅に出会えることができて、しげしげと枝の仕立て方などを勉強させてもらった。

万葉文化館の梅

場所は万葉文化館の庭。今日は歌垣がテーマのトークセッション。万葉歌のルーツの一端を知るいい機会となった。