ポジションランプ

弾正が最後の山の冬木立

空鉢護法堂のある雄山の頂上に木立のシルエットがくっきり浮かぶ季節となった。

この冬木立が平群谷のどの角度からもはっきり認められる頃は、燃えるような雑木紅葉が終盤を迎え、山が赤茶けいちだんと冬めいてくる時節だ。
信貴山城の跡でもある雄山頂上へは、信貴山寺本堂からさらに700メートルの階段と千本鳥居をくぐり抜ける厳しい道である。
たどりついた護法堂のすぐ下には想像を超えるような規模で信貴山城跡があり、最後まで信長にたてついた弾正が平蜘蛛の釜とともに爆死したと伝わる場所がそこにある。
麓の立野地区は山城の出城として数段の大規模な立野城があったところで、町の目立たないかたすみに弾正の慰霊塔がある。地元では人気の武将でもあったらしい。
夜ともなると、空鉢護法堂のあたりに灯りがともされて、それは盆地の遠くからでもはっきりと見えるほど明るい。
その上空を伊丹方面へ降りてゆく旅客機のひっきりなしに過ぎるポジションランプがきらきらと美しい。千メートルもない低い高度だが着陸なので静かにである。
星も月もいちだんと輝きをます季節となった。

馴染みの景色が

虫害のマーキングされ冬木立

虫害で見るも無惨に立ち枯れた木が並ぶ。

この数年猛威をふるっている楢枯にやられた木々を伐採する目印だと思われるが、葉が落ちて見通しよくなった林にテープでマーキングされているのが目立つようになった。
里山によくある楢や椎の仲間だから珍しい木ではないが、これまで木の実をいっぱい降らせたりして森や林に恵みをもたらしてきたであろう大木が、軒並み被害にあって馴染みの景色がすっかり変わってしまうのを目の当たりにするのは淋しいものだ。

偕老同穴

手つなぎの長き影引き冬木立

老夫婦が手をつないで散歩している。

介護という風ではなく、誰の目も気にしないでともに公園の散歩を楽しんでいるようである。
握りあった手は冷たくもなく、きっと暖かいんだろうなと思った。

古墳群

墳丘の形の顕はに冬木立

ふんきゅうのなりのあらはにふゆこだち
一本松古墳
馬見丘陵の冬木立
困ったときの馬見丘陵公園。

寒の句材はないものかと、時々雪が舞うような冷たい風だったがいくつかの古墳のまわりを散歩した。あるにはある、冬木立、寒烏、雪時雨、等々。が、なかなか授からない。苦吟の結果が掲句。

弱い日差しながらも

鹿のまり置ける芝生や冬木立

奈良公園の落葉もすっかり落ちたようだ。
すでに午後3時だが、日脚が伸びているのを実感するほど公苑には日がまだ残っている。

ここは大仏さまの講堂裏だが、どういうわけか鹿たちは煎餅くれではなく、しきりに何かを拾っているようだった。