弾正が最後の山の冬木立
空鉢護法堂のある雄山の頂上に木立のシルエットがくっきり浮かぶ季節となった。
この冬木立が平群谷のどの角度からもはっきり認められる頃は、燃えるような雑木紅葉が終盤を迎え、山が赤茶けいちだんと冬めいてくる時節だ。
信貴山城の跡でもある雄山頂上へは、信貴山寺本堂からさらに700メートルの階段と千本鳥居をくぐり抜ける厳しい道である。
たどりついた護法堂のすぐ下には想像を超えるような規模で信貴山城跡があり、最後まで信長にたてついた弾正が平蜘蛛の釜とともに爆死したと伝わる場所がそこにある。
麓の立野地区は山城の出城として数段の大規模な立野城があったところで、町の目立たないかたすみに弾正の慰霊塔がある。地元では人気の武将でもあったらしい。
夜ともなると、空鉢護法堂のあたりに灯りがともされて、それは盆地の遠くからでもはっきりと見えるほど明るい。
その上空を伊丹方面へ降りてゆく旅客機のひっきりなしに過ぎるポジションランプがきらきらと美しい。千メートルもない低い高度だが着陸なので静かにである。
星も月もいちだんと輝きをます季節となった。