葉が落ちてなほ

あらかたの葉失せ十月桜かな

「冬桜」という季語はある。

「十月桜」は季語ではないらしいが、辛うじて「十月」とあるのでお許し願おう。
一般には四季咲き、というか春と秋の二季咲きで、「春の桜」のようにぱっと咲いてぱっと終わるという潔さはなく、晩秋にはあらかた葉を落としても各枝にほつほつ、だらだらと咲き続ける。
冬桜も11月頃から年内くらいと春4月の二季咲きで一重なのに対し、十月桜は通常は八重咲きである。
十月桜と言っても初冬までは咲くので、この区別は厳密に考えることはないだろう。
冬なら冬桜と思えばいいし、十月に盛りを迎えているのなら十月桜で通じると思われる。
いずれにしても年が明けてから咲く「寒桜」はまったく違うものである。

ただ、いずれの花も、まわりの景色すべてが色褪せかけ、あるいは枯れた時期にあっても、遠目には何か咲いてるという発見、実感があり、思わず駆け寄って確かめたくなるものであることは共通している。

切迫する

十月を限りの命と医師告げぬ

昨日の夜から母の容態が急変した。

往診の医師によればこういう例だとあと3週間ほどの命だという。母は意外に生命力が強いのでもう少し頑張るかもしれないけど、それだけ痛みと苦しみが続くのだから「そんなに頑張らなくてもいいよ」と心の中で語りかけてやりたい。できるなら、最後までずっと眠ったままで苦しまずにいてくれたらどれだけ救われるだろう。

今夜からベッド脇に蒲団を敷いてもしもに備えることになる。