南限自生地

一叢にして南限地君影草
鈴蘭の森は北向く杉木立

奈良・宇陀両市にまたがる森に南限の鈴蘭自生地があり、天然記念物に指定されている。

宇陀市向淵の自生鈴蘭

厳しい環境にさらされながら生き延びてきただけあって、人が踏み入れることも稀な森の中にあった。
両市それぞれ一カ所あるが、両方とも辛うじて車で行けてもすれ違いはとても無理な一本道である。終点の駐車場らしき広場に降り立つと、ツ~ンと杉の匂いが鼻をくすぐる。
自生地の手前には杉林があって間伐したばかりの木が何本も転がっているのだ。杉木立を抜けると、柵で保護された鈴蘭の群生が見られ、ようやく咲き始めたばかりという風情だ。
店で売られているような栽培種のものに比べて、花はずいぶん小さいのでいっそう楚々とした雰囲気に包まれている。
ちょっと心配なのは、柵で囲まれているさして広くない斜面の、その半分ほどは雑草に浸食されているようで、今咲いているものたちだっていつまでも無事であるとは限らないことだ。
間伐されて、すっきりとした杉木立からは風も抜けるし、光もわずかながら届く。
消えてしまわないよう、関係者の努力に期待したい。

「君影草」は「鈴蘭」の別名。五文字で締めたい場合に便利である。