前夜

その前夜地虫の声も聞かれずに

明日入院する。

検査入院という形だが実際には同時に不具合箇所の処置をするらしいので、手術入院と同じことだ。CT検査だと造影剤による腎臓への負担が大きすぎるという担当医の判断で、単刀直入のやり方のようだ。
姻戚に何度か同じ処置を受けている人もいて、特別大変でもなさそうだとは思っているのだが、蓋を開けてみてさあとなったらその時はその時。すべてをお医者に任せるしかない。

過去六十数年、一度も病院のベッドで過ごした経験がないので前夜の今晩になって箸箱をどうしようかとなって、いろいろ現実味を帯びてくると何だか少し心細い気がしてくる。

先ほどからまた雨がぱらぱら降ってきて、虫の声も気のせいか遠いようである。

桃始笑

這ひ出づる地虫のいまだ覚束ず

庭の土をほじくっていたら団子虫がいっぱい出てきた。

ただ、まだ寝ぼけ眼風ですぐに土に中に潜りこもうとする。よくみると図体のわりには殻もなんだか子供のようで色が浅く柔らかそうで、外で活動するにはいくぶんまだ早いような感じだ。啓蟄が過ぎたとはいえ今年はことのほか寒かったから準備できてなかったのかもしれん。
そういえば、虫は気温にしたがって活動開始するのだが、急に暖かくなったからといってすぐに活動が始まるのではなくて、気温とはいっても「気温の累積」であるらしい。ということは、今年は一ト月近くも寒の戻りの日が続いたので累積温度が活動開始するには至らず例年よりは遅いということになる。

今日の暖かさで庭の白梅が一気に散ってしまった。次は桜前線の行方が気になる季節であるが、今年の生き物カレンダーは一筋縄ではいかんかもしれん。