開会式

アラートに継ぐアラートの夏の果

散水中にいきなり夕立がきた。

午後六時を過ぎてようやくむんむんした空気がおさまりかけて、ホースを握った。
するとどういうわけかこんな時にいきなりばらばらと大粒の雨が落ちてきた。空を見てもそれほど暗くないし、例によってほんの気まぐれの雨程度にちがいないと続けたが、いつまでもやまない。
やりかけたルーチンは意地でも続けると決めたがどんどんひどくなる。とうとう頭はもちろんTシャツまで肌にまとわりつくという濡れ鼠。冷房の効く家に駆け込むとそれが一気に冷えて肌寒くさえなってきた。
この二、三日スマホが何度も鳴って大雨警報を知らせる。
然るに肝心なときに鳴らないとはなさけなや。
暦のうえでは夏の終わりだが、夏の代名詞と言っていい高校野球大会がきょう開会式を迎えた。
直前になって代表チームのいくつかにコロナ感染者がでたが、屈せず最後まで戦ってくれればいい。

元山上

勸請縄古りて山居の夏の果
草つるみ勸請縄の夏果つる

雨風にさらされて古びた勸請縄に夏草が這い上っている。

平群谷の渓谷に勸請縄がかかっている。
これは生駒方面へ向かう電車が元山上口駅を出てしばらく行った右側に一瞬だけ見えるシーンだから、注意してないとほとんど見逃してしまう。
元山上とは、ここから生駒山地へのぼった先の「千光寺」の別名で、役行者が大峰山(山上ヶ岳)を開く前に修行したことから呼ばれる。さらに、ここは行者の母が修行したことから、女人禁制の大峰山に比し「女人山上」とも呼ばれている。いつかは訪れたいところである。
このあたり、いかにも断層帯が走っているようで、谷が切れ込んでは独特の景観をなしている。
その渓谷の底の集落の入り口なのか出口なのかに勸請縄がかかっているのである。古くからひっそりとした暮らしが営まれてきたのであろう。
これより秋が深まると、紅葉が美しい里である。