雪近し

大綿に先を譲れる野道かな

もうそんな季節なんだと思う。

数日前の小春日に公園で発見したが、これが飛べば雪が近いとか。
まさに今日など冷たい風があって、屋外にじっとしていると膚寒を越えているようだった。今年の冬はいつもより早く訪れるような予感さえする日だ。
綿虫というのは、焦点がすぐに合わない老眼にも、あのゆっくりとした綿虫の動きにはついていける。分かるがゆえに、道で出会ったりすればあの優雅な飛翔をしばらく楽しむことが可能だ。
ただ、綿虫は人肌の熱でさえ死んでしまうと言われるほど繊細な生き物らしく、手で捕らえようとしてはいけないそうである。だから、さまようさまをただ目で追うことだけで満足しなければならない。

習作

大綿の径に沿ふもの沿はぬもの
綿虫をついと飲み込む滾りかな

「大綿」は初冬の季題。

綿をまとった羽虫のように変化して、空中を浮遊して交尾し産卵したらまもなく死滅するという。別名「綿虫」ともいう。カゲロウ以上にはかない生き物だが、雪国などでは雪が舞う頃に見られることから「雪虫」とも呼ばれている。
先日、ある俳句ブログで綿虫が見られたという記事があったので、さっそくその現場・斑鳩に行ってみた。夕日に透けて光るのが発見できたので帽子でそっと掬ってみる。人の体温でも死んでしまうほど恐るべき虚弱な生き物だから、そっと包むようにである。
雪虫という名はついているが、よく見るとその綿の部分はいくぶん青味を帯びて帽子の中でじっとしている。しばらく観察してから放してやったものの、あのまま儚くなってなってしまったのではないかと今反省している。

数日後、いつもの散歩コースでゆらゆら舞うものを発見したので追っかけてみたら、農業用水の落ちこむところに来てふいに消えてしまった。急流のまき起こす風にでも巻き込まれてしまったのだろうか。

この2週間頭から去らなかった今月の兼題。投句締めきり日につき。