ことり塚のある庭

小式部の葉先ぷるぷる風の道

小式部の実がちょうどいい頃合いだ。

風が全く感じられない茶花の庭園には、秋の七草であるフジバカマも薄紫の花をびっしりつけているが、ただその脇にある小式部の葉先だけがこそりとゆれている。どうやらそこが庭でのわずかな風の通り道になっているらしい。小さな実をつけた枝そのものはぴくりともしないのにだ。
目を転じると、「ことり塚」をとりまく一画は白秋海棠の花がほとんど散りかけて、三枚の羽のような実が重たげにぶら下がっている。替わって、白の秋明菊の蕾が開き始めていた。
吉城園のことり塚というのは、全国にもあまり例がなく大変珍しいので、管理人さんに聞いてみたところ、個人所有の頃この庭で鳥の鳴き合わせがさかんに行われ、亡くなった鳥たちの供養のために建てたものだという。鶯とかメジロなどでも鳴かせたのだろうか。
今は塚の上を大きな木が覆い、地続きの東大寺や隣の依水園からやって来る小鳥たちの楽園でもあろうか。