小式部の葉先ぷるぷる風の道
小式部の実がちょうどいい頃合いだ。
風が全く感じられない茶花の庭園には、秋の七草であるフジバカマも薄紫の花をびっしりつけているが、ただその脇にある小式部の葉先だけがこそりとゆれている。どうやらそこが庭でのわずかな風の通り道になっているらしい。小さな実をつけた枝そのものはぴくりともしないのにだ。
目を転じると、「ことり塚」をとりまく一画は白秋海棠の花がほとんど散りかけて、三枚の羽のような実が重たげにぶら下がっている。替わって、白の秋明菊の蕾が開き始めていた。
吉城園のことり塚というのは、全国にもあまり例がなく大変珍しいので、管理人さんに聞いてみたところ、個人所有の頃この庭で鳥の鳴き合わせがさかんに行われ、亡くなった鳥たちの供養のために建てたものだという。鶯とかメジロなどでも鳴かせたのだろうか。
今は塚の上を大きな木が覆い、地続きの東大寺や隣の依水園からやって来る小鳥たちの楽園でもあろうか。
ムラサキシキブのことを小式部とも言うんですか。なるほど。小さな実ですもんね。あの色は独特。紫草-桐-藤-藤袴。紫のゆかりを思い出します。でも小式部と聞くと先ずピンと来るのは「大江山」なんですけどね。
和歌ではそうなんですね。
俳句では「小紫」が使われることが多いです。下五に据えるにはいいですね。りんり〜んり〜んど〜う♪の濃紫とは違いますけどね。
「ことり塚」というのは珍しいですね。
人形だって針だって供養する行事があるのですもの。
まして小鳥は生ある生き物、供養に値しますよね。
秋色の花々も小鳥のために可憐に咲いてくれるのでしょう。
インターネットで検索しても吉城園のものしかヒットしませんでした。しかも、写真があるだけで特に由来もなにも解説したものもありません。入場料とってパンフレットもないという、いかにも奈良県らしい対応で苦笑してしまいます。
とくに供養することもないようです。一年に一回くらい、「ことり供養」とかやれば話題提供になるし、古寺や仏像だけに依存する観光にも彩りが加わるんですけどね。