帰宅ルートの楽しみ

空重くして信貴山の滴れる

外出から戻るときに眺める信貴の双嶺が好きだ。

たいして高くない山だが、太子が信仰の山として崇めたと聞けばその分、弾正の山城跡とみればその分、貴く見えてきてならない。
自宅はその麓にあり頂上あるいは全容を見ることはできないので、帰宅のルートは東からであれ、南風からであれ、否応なく目に入ってくるのだがなかなか悪くはない。
今日は午後から時折の雨で空は低く垂れ込めているが、雨に洗われた山容は緑をいよいよ濃くして瑞々しい。

練供養

滴れる山の裾練る菩薩かな

昨日14日は當麻寺練供養である。

中将姫が入滅する際25菩薩の御来迎を受けたという故事を再現するお渡り式である。
映像で見るかぎりでは狭いところに大勢の人が集まるので、とても出かける気にもならないが、何せ千年は続く法会であるから気にはしている。
雨が去った今日は、まるで夏と言ってよく、ついこの間まで薄緑から濃緑にかけてのグラデーションに心が奪われていたのが嘘のように、すでに夏の一色に染まっているのに驚いた。
平群谷に迫る両側の山は雨に洗われて、生駒も暗峠も矢田の森も目にも鮮やかな緑である。
まさに山滴るである。