端境

鹿寄せに客の寄り来る古都師走

今は恒例となった年末の飛火野の鹿寄せが始まった。

師走ともなると観光の雑踏も一段落するせいか、集客の目玉にしようと春日参道脇で、ホルンに集まってきた鹿たちに団栗をふるまうのだ。
大仏殿は相変わらずの人混みだが、寒くなると、あの広大な奈良公園を横切って春日の方まで行こうと思う人も少なくなるのではないだろうか。現に、筆者自身もそうであり、何かイベントでもないかぎり近鉄奈良駅から20分以上もかけてあのだらだら坂を行く気にはなかなかなれないものだ。
今は御造替関連イベントもだいたい終わったことでもあり、中旬のおん祭までの期間を狙って鹿寄せは続く。

ここだけ歳晩

がらり戸にリースの町家はや師走

洒落た町家があった。

見た目は町家だが、なかは建築事務所とある。
おそらく町の景観に溶け込むような意匠にした建築事務所兼自宅なのであろう。
通りに面した部分が車庫、その奥が前庭風、これを和風の格子戸風扉でカバーしている。日常の出入り口となっているのが脇のがらり戸らしい。
がらり戸とその奥はきれいに掃かれていて、住む人の感性を思わせる佇まいだ。

建物も町家風だが、がらり戸の格子にはクリスマス用とも思われるバラのリースが早くもかけられて、まだ師走の街騒が感じられない奈良町にあってここだけは歳晩風景を醸し出している。

廃家となって取り壊される町家も見られるが、旧の風情を残した新しい袋に新しい酒が醸されているのも奈良町の今日である。

町内マラソン大会

マラソンのコース備ふる師走かな

見慣れた散歩道の景色が今日はどこか違う。

よく見ると、ついこの間まで見事に紅葉していた街路樹がきれいに短く切りそろえられている。さらに、街路樹の下生えのツツジの垣もきれいに刈られていて見通しがいい。
この八日には鳴り物入りの奈良マラソンが終わったばかりだが、今度はこの町の町民マラソン、駅伝大会が行われるらしい。そのことを告知する看板が電柱にくくりつけられていて、コース予定となるこの道路を整理清掃する町の配慮だと思われる。

国を開く

待ったなし日本師走の選挙かな

乱立する政党は、日本の政治の混迷を表している。

今度の選挙の争点はいろいろあるが、ポイントは果たして「内向き日本」を打破できるかどうかにかかっているのではないだろうか。我々日本人は誰でも日本は「貿易立国」であることを知っている。経済的にも政治的にも相対的な地位が落ち込んできている日本で、何故「脱TPP」、「反TPP」なんだろうか。これではますます世界に取り残されてしまうだけだ。今こそあえて国を開き、諸外国との交渉をしたたかに乗り越えてこそ活路を見い出すことができるはずだ。
各党とも避難合戦の愚を避け、票などを恐れずに国の将来をもっと語ってほしいと思う。

あ、それから。ストレスをまえに敵前逃亡した某党首の顔を毎日ニュースで見るなんて、私にはとても耐えられそうもありません。

大掃除

ぽんぽんのはたきを買ふも師走にて

猫の餌を買いにホームセンターへ。
ついでに年末なのではたきでもと探したら、あの竹の先に幣みたいなものを結んであるのは全くない。
魔法のぞうきんとか、クルマではあるまいになんとかワイパーとか、およそ風情を感じないものばっかり並んでいる。
仕方ないので、ぽんぽんみたいなものを買ってはたき代わりとしよう。