遠い記憶

学帽と日傘の仲のそれっきり

少女が日傘をさすなどはおませなことだと言われた。

うぶな男の子とおませな乙女。
話がかみあうことなどあるわけなく、淡いままの遠い記憶である。

平和の礎にて

慰霊碑に日傘たたみて沖縄忌
語り継ぐおじいおばあの夏あらた

宮古の女子高校生のおじい、おばあに非戦、不戦を誓う詩が素晴らしかった。

今日は慰霊の日。たまたま、その式典の模様をラジオで聞いていた。
彼女のあまりにも純粋で素直な言葉を聞いて、直後の政治家のスピーチは聞くまでもないとラジオのスウィッチを切った。

紫外線指数

回覧板隣りに回す日傘かな

一時梅雨が抜けたかと思われた日々が恋しい。

ピンポーンとなるのでドアホンに出ると、お隣が日傘を差して回覧板をポストに入れとくからという。
たしかに、いまどきの紫外線の強さは尋常ではない。
指数でいうと「危険ゾーン」と言えるかもしれない。

女子大の緑陰で

校舎から校舎へ渡る日傘かな

今年最高気温の奈良を吟行。

お目当てが伝統ある奈良女子大だったので、木立が深く、緑の影も多くて助かった。
キャンパスに着いた頃は学生が見えず、もう夏休みかと思っていたら、授業が終わった校舎からどっとあふれるように学生が出てきた。学食へ向かうもの、次の教室に移るもの様々だが、半分くらいが跣足にサンダル履き、少しの移動距離でも日傘をかざすあたりはさすがに女子大かと思わせる。

重文になっている旧本館を案内いただくも、参加者が多くてクーラーにも限界。汗が引くどころか、ますます吹き出してくるには閉口した。
この大学のシンボルツリーとも言えるメタセコイアの大緑陰にしばらく身を置いたら、ようやく体の火照りも治まってきた。

マナー

アーケイド抜けてひろげる日傘かな

日中の暑いときに商店街のアーケイドに入るとほっとすることがある。

天井が高いのもその理由の一つだが、なにより太陽の日差しが遮られるし、通りに開かれた冷房の効いた各店からの冷たい空気が流れているせいもあるのだろう。
日傘や雨傘をさしているとき、アーケイドの入り口でちゃんとたたんで出口でまた開く人もある一方で、閉じないでそのままさしたままの人もいてそれぞれ様々だ。ただ、混雑した通りではやはり傘はたたんでもらいたいものだ。

コントラストの夏

夏日傘踏切りに落つ影の濃き

この時期の物の影というのはすべからく濃いものがある。
炎暑に炙られた踏切の眩しさと、それを渡る人たちの影もまたコントラストを強めていた。

夏はコントラストの季節である。