桜の切り紙

切り貼りのどれも低きに春障子

覚えておられる方も多いだろう。

桜の形をした切り貼りがある障子。少し破れたくらいなら花びら形にカットした紙で繕ったものだ。
今では障子用の紙だって簡単に手に入るし、糊もわざわざ手作りする必要もなく、張り替えもずいぶん簡単になったことだろう。
春ともなれば去年張り替えた紙もうっすら灼けてきたりするものだが、強くなった日がその分あまりある光を通してくれる。
切り貼りの部分もそれだけくっきりと分かる。
障子の低い部分だけつぎが当たってるところをみると、破ったのは猫かあるいは小さな子供の仕業か。

陰影

春障子学芸員の声洩れて

障子の中では古代雛の展示が行われている。

法華寺では、歴代門跡の雛人形が公開中だ。
普段非公開の座敷は広く、明かりは乏しく障子からのものに依存しているので、それほど明るくはない。柔らかい光が人形の表情に陰影を与えて、雅な印象を深める。
何か聞きたいことがあれば、縁側に正座した学芸員とおぼしき人に聞けばいい。
ここでも、雛の調度が特徴的で、ほかには幼い庵主のために用意されたとおぼしき人形や遊び道具なども展示されていて、普段うかがえない尼寺の暮らしをかいまみることができる。

溜息をついたのち、外に出れば庭園は椿が咲き誇り、囀りが絶えない。
敷地が広いこともあって外からの雑音も届かず、見学の余韻に浸りながらの散策にはちょうどいい。

緩む

半開きに日差し取り入る春障子

ソファの生活もいいが、この時期は和室で日向ぼこが気持ちいい。

障子を少し開け畳に寝そべりながら、庭の木たちの芽だしや時々やってくる鳥たちを眺めていると、体の芯から緩んでくるのが分かる。
そろそろ庭仕事も忙しくなってくるので、束の間の安息である。