向寒

木枯や木末は天にそりかへり

風が冷たくなってきた。

道路に落葉がさかんに降ってくる。
歩道には踏みしだかれて固く締まった部分もあって、いよいよ冬ざれ感がましてきた。
染井桜はすでに裸同然。雑木がめだつ盆地四方の山々は黄葉、紅葉のミックスで彩がほんとうに豊かで心を和ませる。
十一月も今日でおしまいと同時に、明日からはいよいよ寒い師走。
心して向寒の肚を固めたい。

冬本番

木枯の集めしものをかい掘りぬ

初めての木枯らしらしい風が吹いた。

今年は見事な紅葉を見せたブルーベリーやドウダンツツジの、最後まで踏ん張っていた葉も一日にして吹き飛ばされたようだ。
夜になってさらに激しくなってきたようで、換気扇のあるあたりがぼうぼうと音をたてている。
木枯らしとは初冬に吹くものとされるし、木の葉もおおかた飛ばされては、最初にして最後の木枯らしとなろうか。
しばらくは厳しい冷え込みが続くと言うから、いよいよ冬本番とみていいだろう。

英語で読む村上春樹

木枯やイヤフォンの音かき消され

木枯や耳のますます遠くなり

散歩の時はダウンロードした英語講座を聴くことが多い。

ありがたいことにNHKの語学講座をパソコンで聞けるストリーミング放送が毎週月曜日に更新されるので、その中から「英語で読む村上春樹」などいくつか選んでおいたのをiPodやiPhone などに仕込んでおくわけだ。
1時間も歩くと30分番組なら2回分聴けるのはいいのだが、困ったことに音楽とか英会話とかを聴いてると句作の方がさっぱりなのである。散歩というのは筆者にとってはある意味でデイリーの吟行であるわけで、神経が耳にとられ、また内容を理解しようとする脳がイヤフォンから流れる放送にとられてしまうと、まったく五感が俳句のために働いてくれないのである。

さらにである。今日などは木枯らしが強くよく聞き取れなくてボリュームを上げるとますます作句に五感が働かなくなるという始末になる。