豊の羽後

みちのくの林檎ひだりに黄金みぎ
みちのくの朱より紅き林檎かな

鳴子から峠を下って横手盆地に入った途端目を瞠った。

国道の右半分が黄金の波、左半分が林檎園である。
頃は9月の末だったか、刈り入れを待つばかりに首を垂れた稲穂が光り、誰も人の手の触れられてない林檎は黒を帯びた赤色をしている。国道は街中を抜けないから、そんな状態が延々と続く。
豊かな国だと思った。銘柄米「あきたこまち」の産地だから当たり前だといえば当たり前だが。黒光りしていた林檎の種類は何だったんだろうか。
視野いっぱいに黄色と赤の景色がひろがる、豊の羽後はいまでも鮮やかに思い出すことができる。