元興寺小塔院跡

からたちの実の涸ぶりて門鎖す

からたちの実の錆びしまま無縁仏

もと元興寺の伽藍跡地で残されている数少ないもののひとつである。

荒寺に哀れをさそう遊女の墓があるというので案内してもらった。話では、墓というよりはただの石塊ばかりであまりにかそけくて言葉もないという。
残念だったのは、どういうわけか今は私有地になっているとかで、中へ入れてもらえない。「史跡元興寺小塔院跡」という案内表示板があるのにである。
何だか割り切れない思いに立ち去りがたくいると、跡地に続く道には葉の多くが落とされてやや黄をおびた棘ばかりがめだつ枳殻の生け垣が続いているのが目にとまった。その棘に守られるように直径二センチほどの実が成っているのだが、もう萎びてひからびそうになっていた。