柳の花散る

柳絮とぶ采女入水の池にかな

一面雪のようになるのだが。

猿沢の池も今年は面食らっているのではないか。
鹿だって煎餅をくれる人がいないので、今まで以上に街を闊歩しているというし、人通りもめっきり減って奈良の街は様変わりである。
見る人とていない池の面を静かに柳の花が散ってゆく。観月の日に舟を浮かべて采女をしのぶ行事も今年は見られないかもしれない。

柳絮の才

雨降れば暴れる川の柳絮かな

実際に映像でしか見たことがない。

柳絮というのは文字通り柳の花が絮となって空を舞うものをいうが、まさに遠目には雪が降るみたいに空中を漂うことがあるらしい。
柳といえば、川柳。上高地の安曇川河畔の柳を思い浮かべる。
あれほどの数があれば、どの木からもおびただしく一斉に川の上を絮が飛んでゆくシーンを想像する。
柳といっても、よく見る類いの枝垂れ柳ではないらしいので、川柳なら飛ぶのではないだろうか。

山に詳しい渓山さんなら、上高地で目撃したことがあるかもね。

ところで、「柳絮の才」とは、文才がある女性のこと。
晋の王凝之の妻の謝道蘊が、子供の頃降る雪を白い綿毛がある種子の柳絮にたとえた詩を詠んで、文才をたたえられた故事からとっている。
さしずめ南天女のことをいうか。