3Lサイズ

大きくてけれど緻密に伊那の桃

7月になると毎年大きな桃がとどく。

しかし、悪天候のせいで今年の出来はもうひとつで8月にずれこんだうえ、早く食べろと言う。
ふたり暮らしには申し訳ないほど多くて腐らせるわけにはいかず、ひとり一個の大盤振る舞い。
さすが、3Lサイズというか、大型の桃はひとりで食うには途中で休憩をはさむしかなく、おたがい顔を見合わせては腹をさする。
プチぜいたくな、そしてささやかな時間がいとしい。

万能包丁

桃割りし鈍き刃の蜜光る
鈍き刃を突き立て桃の離れけり

何年も使っている万能包丁がくたびれている。

野菜でも肉でも何でもござれと家人は気にせず使っているが、ときどき研ぐにせよ最初の切れ味はとうに失われている。よくも器用に使うものだと感心するくらいだが、一向に気にしない質のようである。
今日もまた、信州から届いた立派な桃の冷えたのを、刃先を器用に種に沿いながら割っていたが、肉の断面はと言うといくぶん崩れているように見えて、なんだか折角の桃がかわいそうに思えた。

桃源郷

伊那谷の桃をはぐくむ水なりや

ここ数年毎年中元としていただく飯田の桃がおいしい。

それは大きな桃で甘さも十分、店で買えば相当な値段だろうと思われる一級品である。
桃は傷みが早いので、盆棚に毎日一個を捧げてはさげて冷蔵庫にいれて冷やして食べる、この期間10日くらいは続きなんとも贅沢な日々なのである。

山梨や岡山、福島県などは桃の生産地として知られているが、長野の伊那盆地もまた桃の名産地であったとは知らなかった。アルプスからの水が豊富なこと、天竜川をはさんで川霧とか冷涼な空気とかかわっているんだろうか。
伊那谷の澄んだ青空を思い浮かべながら今日もまた一個家人と分けて食べた。