かつてシルクロード

梅雨雲の暗峠颪めく

降ったり止んだりの日が続く。

生駒山はたいして高くもない山だがまわりにもそれ以上高い山がないので、しばしば生駒山を境に天気の様子が異なることが分かるときがある。たとえば、生駒山を吹く風はたいていが大阪の方からで、とくに時雨のときなどが顕著だが雨雲や雪雲は決まって大阪の方からやってくる。そのとき時雨雲が生駒を越えるさまがよく観察でき、今頃はどの辺りが降っているのか、あるいはいつ頃こっちに降りそうかなどがよく分かるのだ。
昨日などは夕方になって梅雨の雨が上がり、生駒頂上の何本かあるテレビ塔が全部はっきり見えるのに、生駒山系の鞍部が一段低くなった暗峠の辺りを低い雲が大阪からせり上がるように流れてきては滑り落ちてくる。さながら暗颪が雲状となった形で、峠の辺りだけがまだ雨に降られている。この雲のスライドしてゆくさまはショーとしても十分楽しめる光景であった。

この暗峠は古代より生駒を越えて大和と難波と結ぶ重要な峠で、今も立派な国道である。ただあまりに勾配がきつく狭いので酷道とも言われ、自転車の激坂チャレンジの舞台として知る人ぞ知るコースになっている。
南へいくと十三峠、これは業平が高安の女のもとに通ったとして知られるが、幹線ではない。ストレートの近道だから利用したにすぎないのである。
幹線という視点で言うとあとは竜田越であろうか。ほかにもいくつかの峠があるが所謂シルクロードではない。