昇竜

神奈備の尾根這い上る椎若葉

龍田から三室山に向けての稜線がはっきり見える。

その稜線にしたがってこんもりと椎若葉が盛り上げているのだ。まるで龍が昇ってゆくようにも見える。
龍田古道の走るこの辺りは万葉に多く歌われ、歌碑もまた多い。
いつか歩かなきゃと思いつつそのままになっているが、新緑の今頃もまた気持ちがいいものにちがいない。

豊かな森

おびただし実生の椎の若葉かな

多武峰の山中は植生が豊かである。

下った道はまるで腐葉土そのものと言ってもいいほどで、柔らかでフカフカであった。
そんな環境条件に恵まれたせいか、落ちた実があちこちに発芽して柔らかげな若葉の色を発している。これらの苗はこれから厳しい生存競争にさらされ、多くが場所取り競争に敗れて大木までには成長できないだろうが、どの苗も少なくとも数年は生き永らえるんじゃないかとさえ思える豊かな土壌である。

椎のほかにも新しい苗がいっぱい顔を出し、珍しいものがあると案内役のスタッフの方から適宜説明があるが、とても覚えていられないほどの種類の多さである。なかでも、「室生天南星(テンナンショウ)」「花筏」「葉蘭の花」「水引」などが強く印象に残った。