The last leaf

本坊の一葉残れる紅葉かな

今日は久しぶりに随分歩いた。

十二月恒例の奈良町吟行は、興福寺を経て浮見堂で鴨、かいつぶりを観察。ここで一時間費やしてUターンし奈良町を下る。JR奈良駅近くの会場まで、万歩計にしたら1万はおそらく歩いたろう。
いつものように材料はいくらでも転がってはいるが、なかなか句の形にはなってこずイライラは募るばかり、会場についても苦吟悶々して締め切り時間ギリギリの投句。

幸いにも評を頂いたもののうちの一つが掲句である。
吟行とはいえ、今日は必ず一つは「冬紅葉」を詠もうと自分に課していて、通りかかった興福寺本坊とある意外に小さな坊に見つけたものである。
しかも、桜古木の文字通り「最後の一葉」で、高校の文化祭にオーヘンリーの「The last leaf」の英語劇をやったことが急に蘇ってきて、妙に去り難く一句絞り出すことができた。

自分を慰める

長逗留残る紅葉を諾へる

「残る紅葉」は「冬紅葉」の傍題。

実際に詠もうとすると意外に難しい。
季語だけで6文字を消費するので中七に置くことが多くなり、そのため下手すると上と下が分断されかねないからだ。
今日は「冬紅葉」の持つ凄みを増した紅葉のイメージを強めるためにチャレンジしてみた。

長逗留というのは治療のための湯治宿の滞在、あるいは札幌など遠距離に単身赴任を余儀なくされている身などを想定してみたが、いずれにしても予想より長引いてとうとう紅葉の季節も終わろうとしている。それも止むを得ないなあ、せめてこの凄惨な紅葉が慰めかと自己肯定している。

はてさて、そんな風に読んでもらえるかどうか。