引きはがすやうにつまみて毛虫取
玄関先に仁丹より二回りも大きくて黒いものが点々と落ちている。
さては、虫の糞だとすぐに気づいたがその上の楓を探しても見つからない。とりあえず、掃いてその場は過ごしたが、また数日たった今日も点々と。どうやら同種の虫らしい。今日こそと見上げるように枝を探したら、いたいた。長さ6センチくらいはあろうかという毛虫である。
透かし見ればなかなか毒々しい派手な衣装をまとっている。賢いやつなら保護色の術を使うのだろうが、こいつは逆に毒々しく見せて自分の身を守ろうとしているのにちがいない。
歳時記には「毛虫燒く」という季語があるが、たった一匹である。そんなことせずにそこらの棒でつまんで汚水枡へポイである。
あの虫は蝶になるのか、それとも蛾か。いずれにしてもそれなりの大きさのものに変身するはずのものであったろう。