変身

引きはがすやうにつまみて毛虫取

玄関先に仁丹より二回りも大きくて黒いものが点々と落ちている。

さては、虫の糞だとすぐに気づいたがその上の楓を探しても見つからない。とりあえず、掃いてその場は過ごしたが、また数日たった今日も点々と。どうやら同種の虫らしい。今日こそと見上げるように枝を探したら、いたいた。長さ6センチくらいはあろうかという毛虫である。
透かし見ればなかなか毒々しい派手な衣装をまとっている。賢いやつなら保護色の術を使うのだろうが、こいつは逆に毒々しく見せて自分の身を守ろうとしているのにちがいない。
歳時記には「毛虫燒く」という季語があるが、たった一匹である。そんなことせずにそこらの棒でつまんで汚水枡へポイである。
あの虫は蝶になるのか、それとも蛾か。いずれにしてもそれなりの大きさのものに変身するはずのものであったろう。

日替わり

日当たりの壁に派手なる毛虫かな

白壁に派手な色した毛虫がとまっている。

そう言えば、柿の若葉にもでんと毛虫がのってたな。
去年、蓑虫が増えたブルーベリーも心なしか葉っぱが食われているようである。
なにしろ10匹以上ぶら下がっていて、これがみんな生きていたらブルーベリーも敵わないだろう。
葉が茂れば虫たちも活発になり、鳥も子育てに忙しい。
いつも一人だったイソヒヨドリが最近増えたようで、電線をあちこち移っては素敵なソプラノを聞かせてくれる。
巣籠もりの毎日だが、句の材料が日替わりに目の前に現れては楽しませてくれる。

嫌悪感わかず

紫の花に毛虫の好き好きや

根締めの紫蘭が満開だ。

よく見ると、花茎を這い上って花を食害する毛虫がいる、いる。
毛虫というと、葉や芽などを食害するのが普通だが、葉には目もくれないで珍しいものがいたものだ。
珍しい光景に不思議にも嫌悪感はわかず近づいてみると、黒地に深紅の横縞のあるカラフルな虫だった。