一丁目寂し

本邦の南晴れたる帰燕かな
もう一回軒の巣かすめ帰燕かな
電線に見馴れぬ数の帰燕かな
若鳥の親より太き帰燕かな
この町で分隊組める帰燕かな
燕去つて寂しくなりし一丁目

「電線に鳥がとまってるよ」

そういう声に起こされて、南西の空を見たら雲ひとつない秋のような青空だ。
まるで次の句を思い起こされる朝だ。

一天の翳りなきとき帰燕かな 桂信子

最初の句はこれに類すると言われそうだが、あえて。

さて、その電線の鳥だが、これは幾分大きめで寝ぼけ眼には何の鳥だか判別がつかない。
そこで、外へ出ると、お向かいの燕の夫婦が巣作り、子育てのときにさんざんつかまっていた電線に、20羽ほどの燕が止まってはまた周りを旋回している。そして、これがいうところの帰燕らしいと悟った。初めて見る光景だ。
起きがけに大きく見えた鳥は若鳥らしいと悟った。
お向かいの巣の子作りは一回だけだったので一家族で6,7羽程度。ということは、この辺りに営巣して子育てを終えた四家族くらいが一分隊として今日発つと決めたらしい。
朝食を終わって外に出てみたら、電線にはもう燕の姿はなかった。ひとまず淀川にでも塒求めて向かったのかな。