深山に眠る

地図になき洞の僥倖ましら酒
コンパスの狂ふ異界のましら酒
猿酒に徐福の帰心失せしとぞ
猿酒は人知れず酌むべかりけり
猿酒のついぞ聞かざる酌み交わし
姨捨の山に猿酒眠るとや
猿酒の洞は死んでも言えぬなり
猿酒の親にも言へぬ在処かな
養老の滝の正体ましら酒
猿酒に仙人通を失くしけり

何ともファンタジーな季語である。

今月の例会の兼題に「猿酒」がとりあげられた。
猿が木の洞などに集めておいた木の実が自然発酵した酒を言う。リスだったらそういうこともあるかもしれないが、ときに歳時記はこのような空想上のものまで季題に仕立て上げるところが面白い。

だったら詠み手は存分に遊び心を発揮したいところだが、とりかかってみると意外に難しい。