雪形と名づけた男

戦友の許に発たれて盆の月
戦友をすべて見送り盆の月
常念の黄色いテント盆の月

高山蝶に魅せられた男がいた。

教師をするかたわら常念に通いづめ高山蝶の生態を初めて明らかにした功績は大きい。
画布いっぱいに描かれた、手描きの写真よりも精細な蝶の絵は圧巻である。
蝶を追う一方で、山の写真もまた素晴らしい。「雪形」という言葉を生み出したのもこの男、田淵行男である。
生前に一度だけお会いしたことがある。隔月にいただく原稿のお礼を兼ねた取材旅行だったが、同時にお会いしたご夫人は「濱」の同人として句集を出されるなど、ともに品格あるお人柄に魅了されたことが懐かしい。

安曇野にある記念館に行くと、著作「黄色いテント」の題名ともなった、彼のイニシャルを刻んだ黄色いテントが人目を引く。