雪形と名づけた男

戦友の許に発たれて盆の月
戦友をすべて見送り盆の月
常念の黄色いテント盆の月

高山蝶に魅せられた男がいた。

教師をするかたわら常念に通いづめ高山蝶の生態を初めて明らかにした功績は大きい。
画布いっぱいに描かれた、手描きの写真よりも精細な蝶の絵は圧巻である。
蝶を追う一方で、山の写真もまた素晴らしい。「雪形」という言葉を生み出したのもこの男、田淵行男である。
生前に一度だけお会いしたことがある。隔月にいただく原稿のお礼を兼ねた取材旅行だったが、同時にお会いしたご夫人は「濱」の同人として句集を出されるなど、ともに品格あるお人柄に魅了されたことが懐かしい。

安曇野にある記念館に行くと、著作「黄色いテント」の題名ともなった、彼のイニシャルを刻んだ黄色いテントが人目を引く。

“雪形と名づけた男” への2件の返信

  1. ドラマ化されたテレビを見たことがあります。
    平岳大が演じていました。
    その緻密な絵の表現力に圧倒されたのを記憶しています。
    毅然とした奥さまの姿も印象的でした。
    そんなすごい人にお会いして緊張しませんでした?
    記念館の作品は生態としても芸術としても価値あるものなんでしょうね。

    1. お会いしたときはすでに老境に達しておられて、持病と闘いながらも大変穏やかに話しておられましたよ。豊科の自宅のあった近くに記念館があります。
      文章はまた素晴らしい日本語で、このような美しい日本語を語れる人はもう見られなくなったような、寂しい気がします。

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