室生寺

石楠花の磴の落差を託言せり(しゃくなげのとうのらくさをかごとせり)

先週末知人を長谷寺と室生寺を案内した。

せっかくこの時期に来奈されたんだから、牡丹と石楠花のそれぞれ随一の名所に行かぬ手はないとこちらから提案したものだ。見事な牡丹と全山の石楠花。こんな贅沢な旅はそうそうはないだろう。ただ、駆け足の旅だったので少々くたびれてしまったが。

ただ、室生寺に来てみて石段の落差を大きく感じるようになったことは発見だった。もともと足に障害のある家人は前回尋ねたときは奥の院までは行き着けたのに、今回は途中の弥勒堂の段差に汲々としている。

当地では何をするにも車でということが多く、あまり歩くことがなくなってきたのもその理由らしい。考えさせられる奈良暮らしである。

更けてゆく春

石楠花の玉の巨きを愛でゆけり

雨が通り過ぎたようなので家人と駅まで散歩した。

いつも行くコーヒー店で家人はアイスコーヒー、汗ばむような陽気だったのでどうかと思ったが僕はブレンドコーヒーを飲む。駅に隣接したショッピングモールの小さな店だが、ここの豆が意外にうまいのだ。店で売っている豆と他のブレンド豆も買って帰った。

帰りに路地の酒屋を通りかかると、すでに昼間から立ち飲みの客もちらほらといて、のどかに春が深まっていく。この通りはかつては商店街で、今となっては酒屋2店しか営業しておらず、その他はシャッターを閉じたまま、あるいは建て替えられても住居専用になっていたりで、「北新道」と書かれた街路灯も色褪せているのがさらに侘びしさを募らせる。
このような古びた路地も丁度今頃は鉢植えの花でちょっとした賑わい。なかには見たこともないような、大きな玉をつけたりっぱな石楠花の鉢もあって目を楽しませてくれる。