安定

ポケットの古きレシート秋の雲

いつのものなのか。

よく覚えていない。
急に寒さを覚えて一年ぶりの服を着て、ポケットに手を突っ込むとしわしわの古いレシートが出てきた。
そう言えばあんなこともあったかなと振り返って見るが、たいした感慨もなくこのまま時に流されてゆく浮遊感のようなものが身を包む。
秋が足早に過ぎてゆくような気温の変化だが、この何ごともないというのが精神的には一番安定しているのだと思える。

校歌の海

エアポート浮かべる海の雲は秋

空を見ているとやたら誰彼のと思い出す形をしている。

ふだんは感じないことでも、ふとしたときに見上げる空の雲が妙に親しい。
ほんの少しの間、そんなことを考えながら空の雲を見るのは久しぶりだ。
校歌にある伊勢の海の向こうに空港がある。これを泳いで往復したというのだから、そのかみの先輩は逞しい。