指標

護法鉢灯りそめたる秋夕焼

久しぶりに夕焼けがきれいだった。

六時を過ぎるころにはすでに日は信貴山の影になり、一気に夜が忍び込んでくる。
そのわずかな間に、薄暗くなった空をバックに雲が金色にかがやく時間があらわれた。
すでに鴉たちは塒に向かった後であり、私も鍬を置いて帰る時間である。九月のこの時期は苗の植え付け、種まきとやることはいっぱいある。
流れる汗を拭いて夕焼けをみているといつの間にか信貴山の頂上、護法鉢の灯りが瞬きはじめた。みるみる明るさを増してゆく。遠くから見れば、海に向かって標となる灯台のように盆地の指標的な存在でもある。