夜の秋

夕鐘の乾きし響き秋隣

おしょろとんぼが群れる季節になった。

朝の蝉は相変わらず賑やかだが、今年はなぜか朝夕の風に秋の気配を濃く感じるのは私だけだろうか。
かつてお盆の頃に感じた初秋の感じに非常に近いものを感ずるのだ。こうした感覚はここ何年も味わってないので、まさかこのまま秋に一直線に向かうとは信じられないのだが、もしかすると熱帯夜と呼ばれる夜は今年は少ないのではないかと期待するのである。
今は日中の暑さに斑鳩あたりを歩く人とてないが、一足早く秋をこの足で確かめてみるのも悪くないなと思う。

秋を待つ

軽やかに手繰る雨戸の秋近し
階段を二段飛びして秋近し

あっという間に七月尽。立秋はそこまで来ているが。

今年は十月まで暑いという長期予測。秋らしい日々がますます見られなくなる昨今だが、そうなるとよけいに秋の到来が待ち遠しい。

雨戸というのは、今では新築の家に設けられること珍しくなって、代わってシャッターが全盛である。となれば、雨戸の開け閉めに季節を感じるチャンスがまたひとつ減ってきていると言えよう。ガタピシ言う雨戸を力づくで転がしたり、戸袋に仕舞い込んだり引き出したりするときに、ああ雨だな、雪かもとか、今日も暑くなりそうだ、今夜は冷えそうだなと肌で感じることはもうないのだ。
マンション生活であればなおさらそうであろう。
「雨戸」「戸袋」もこの二、三十年で死語となってゆくのであろうか。

「秋近し」には「秋を待つ」という傍題があり、「夏果て」のゆく夏を惜しむ気分とは対極的に秋を待ち遠しく思う気分をいう。
これだけ連日暑い日が続くと、ちょっとしたところに秋を感じたいのである。