七割の壁

惚茄子の尻は多産や種を採る

長さ30センチ近い。

ずしりと持ち重りのする尻はみごとで重さは通常の五倍以上はあろうか。
樹の上で約二ヶ月生らせて熟成させると茄子の特徴のあの紫紺が褪せ、尻が金色に変われば種の採りごろとなる。
なぜ種採りにこだわるかと言えば、その畑に適したDNAが種に受け継がれ育てやすくなると言われているからである。茄子などは春のまだ寒い頃に苗を育てるのが普通なので直播きすることはないが、5月ごろ直播きすれば発芽も育ちもよくなると言われている。げんに今年夏に採った人参をそのまま蒔いたら100%近く見事な発芽だった。人参の発芽率は七割と言われ、へたすれば全く発芽しないこともあって、発芽さえすればもうできたも同じというくらい発芽がむずかしい作物である。自家採取した種の力は侮れない。
今年も無事に育ったカボチャ、オクラ、ピーマン、シシトウの種が採れた。
畑は冬野菜の時期となった。

生乾き

種採って先祖に顔のたちにけり
種を採る親指の爪黒くして
晴天のこの日を選び種を採る

季語にいう種採というは一般に花の種をいうらしい。
たしかに花というのは春から夏にかけて咲くものがほとんどで、そこから種を採るといえばちょうど今頃の季節であろう。
いっぽう野菜はと言えば種類によって種採の季節は異なってくる。
大根や葉ものなど冬野菜を代表するアブラナ科に属するものは初夏のころ種をつけるものが多い。人参、玉ねぎなどもそうである。
かたや夏の野菜の代表とも言える胡瓜、茄子、トマト、オクラなどは秋まで十分熟させて種を採る。
スイカや南瓜などの実ものは食べたあとの種を採ればいい。
今日はたまたまプランターのニラの一本が種をつけたので採取したが、完全に乾いてないものも混じっていたらしく封筒にしまってもニラの匂いが消えない。ちょっと早かったようである。
このまましばらく乾かして菜園にまいてしまえば来春には定植に格好の苗となるだろう。