都会っ子

引っ越しの木にも空蝉残りをり

東京から持ってきた梅の木に蝉の抜け殻がしがみついている。

移植後夏はわずか1回しか巡ってないので、この蝉は間違いなく東京生まれの奈良育ちである。あの小さな根鉢のどこに潜んでいたのか分からないが、よく振り落とされないでついてきたものだ。
しかし残念なのは雌だったのかどうか、とうとうこの庭では蝉の鳴き声を聞くことはなく、かわりにこの朝近くの家からだろうかクマゼミの「ワシワシ」という賑やかな声を聞いたのだが。

生命のくりかえし

来し方の自分史重ね蝉の羽化

今朝タバコを吸おうと庭でしゃがんでいると、いくつもの木の地面からちょうど1メートルくらいの高さにいくつもの蝉の抜け殻がしがみつくようにぶら下がっていた。
煙を吐きながら、彼らの長い眠りの間の、自分の来し方を思わずにいられなかった。

見慣れたものでも普段とは違う位置から眺めてみると新たな景色も見えてくるものだな。