七草粥

粥柱卦にあるままの杓子にて

粥をよそう杓子である。

一般にはおたまと呼ばれている上品なものをさすと思うが、茶粥を食う習慣のある紀州では、木でできた大きくてやや浅い独特の杓子を使う。調べてみると今では奈良の五條あたりで細々と作られているようだが、この木でできているというのがいいのである。
大釜にぐらぐら煮立っている粥をかき混ぜたりするには、上品なおたまでは釜の底までは届かないので柄も幾分長めである。それに、鉄釜の底に沈んだわずかな米粒を持ち上げるように粥をすくうためには釜の底を傷つけない木製でなくてはならないのである。
最近は竈に掛けた大釜でお粥を炊く家など希だろうから、こうした紀州独特の茶粥用木杓子はさらに廃れていくのだろう。寂しい限りだ。