京都の夜

寄宿舎の夜食囲める綿子かな
懐かしのご当地ソング宿綿子

京都の夜は町家ステイ。

町家を改造した一棟貸し切りの宿である。朝食は決められたものが提供されるが、夜は仕出し出前もあれば外食もOKである。
元は町家なので部屋も十分あって、寝床を並べる部屋のほかに食事や懇談に使える部屋もある。さっさと風呂に入る者も入らぬ者も隅に積み上げてある綿入れにだけは全員が袖を通し、さながら修学旅行の夜を思い出させるような同窓会感覚で夜更けまで飲んだり、唄ったり。とくに歌はカラオケがなくても、メンバーには持ち歌一千を豪語する猛者もいたりするので、ご当地・京都にちなむ懐メロが次々に飛び出す。
とかくして、京都の第一夜はあっというまに更けるのであった。

掲句のうち寄宿舎の句は、季題「綿入れ」で思い出した昔のシーン。毎夜勉強室と言われる部屋に集まっては、ストーブの湯をかけた日清チキンラーメンをすすって夜遅くまで勉強もしないで話し込んでいたものだ。