老醜など

おのが老悟りきったる背蒲団

「せなぶとん」。と言っても今は知る人も少ないだろう。

我々世代だってちゃんちゃんこなら知ってるが、「背蒲団」なんて着たことないし、まして「負真綿(おいまわた)」などは見たこともない。
上着と下着の間に入れた「負真綿」がのちに進化して、袖無のように羽織るようになったのは、現代版で言えばさしずめユニクロなどで売られている極薄の「ダウンベスト」だろうか。
背蒲団は綿入りの薄い蒲団を背中に背負えるように紐をつけたもので、背中の曲がり掛けた老人にはぴったりくるものだ。

ユニクロファッションを老いも若きも何の衒いもなく、気取らずに着られるようになったいいご時世とも言えるが、若い人だってパジャマ兼用風トレーナーで平気で街に出てくる時代だ。ファッションから恥じらいというものが失われた現代では、背蒲団で外出したところで、だれに遠慮があろうか。いや、意外に若い人には最新ファッションに見えるかもしれないぞ。

生徒らに知られたくなし負真綿 森田峠

に触発されて。