老醜など

おのが老悟りきったる背蒲団

「せなぶとん」。と言っても今は知る人も少ないだろう。

我々世代だってちゃんちゃんこなら知ってるが、「背蒲団」なんて着たことないし、まして「負真綿(おいまわた)」などは見たこともない。
上着と下着の間に入れた「負真綿」がのちに進化して、袖無のように羽織るようになったのは、現代版で言えばさしずめユニクロなどで売られている極薄の「ダウンベスト」だろうか。
背蒲団は綿入りの薄い蒲団を背中に背負えるように紐をつけたもので、背中の曲がり掛けた老人にはぴったりくるものだ。

ユニクロファッションを老いも若きも何の衒いもなく、気取らずに着られるようになったいいご時世とも言えるが、若い人だってパジャマ兼用風トレーナーで平気で街に出てくる時代だ。ファッションから恥じらいというものが失われた現代では、背蒲団で外出したところで、だれに遠慮があろうか。いや、意外に若い人には最新ファッションに見えるかもしれないぞ。

生徒らに知られたくなし負真綿 森田峠

に触発されて。

“老醜など” への2件の返信

  1. 背蒲団のこと、一生懸命思い出しています。
    「こころ旅」で正平さんが背負っていました。
    我が母も昔寒い時に背負っていました。
    叔母が先年、真綿を入れて作っていて懐かしかったです。
    これを書きながらやっと思い出しました。
    そうそう、私の田舎では「オイネ」と言いました。
    背負う事を「負いねる」と言うのが伊勢弁です。

    今日はOB会の幹事会で寄りました。
    最高齢者96歳、最年少者69歳の集い。
    96歳の元支店長は今も現役スキーヤーで毎年スキー場へ通われます。
    負けてはおれません。元気を貰いました。

    1. 「負いねる」。いい方言ですねえ。その地方に伝わる言葉はその土地の文化の骨格ですもんね。
      それぞれの地方に方言があり、それぞれの文化があって、しかも対立のない国というのは世界に誇れる。外からさまざまな文明が伝わってきても、八百万神がベースにある国はたちまちいいとこ取りして自分たちのものにして、矛盾することがない。

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