色鳥の尾羽を金茶に打ちふれり
尾羽打てる鳥のしばしに柿の畑
法隆寺にはなくても、斑鳩の里にはある。
柿畑である。法隆寺の後背部にあたる、法輪寺や法起寺の辺りはまさに里といっていい風情が残されていて、果物の産地でもある。大小のため池の周りには葡萄、無花果、柿の畑が点々と広がっていて、今は柿の木に真っ赤に熟れた実が鈴なりである。
遊歩道も整備されているのでその周りを歩いていると、「カタッカタッ」という音が響き渡ってきた。その主は柿の木のてっぺんにいるジョウビタキの雄で、しきりに尾を打ち鳴らしているのだった。ジョウビタキというのはいろんな鳴き声を聞かせてくれる鳥なのだが、その日はただ尾を打ち鳴らすのみ。何のための行動かは分からないが時々に響く音にしばらく耳を傾けた。