柿畑の主

色鳥の尾羽を金茶に打ちふれり
尾羽打てる鳥のしばしに柿の畑

法隆寺にはなくても、斑鳩の里にはある。

柿畑である。法隆寺の後背部にあたる、法輪寺や法起寺の辺りはまさに里といっていい風情が残されていて、果物の産地でもある。大小のため池の周りには葡萄、無花果、柿の畑が点々と広がっていて、今は柿の木に真っ赤に熟れた実が鈴なりである。
遊歩道も整備されているのでその周りを歩いていると、「カタッカタッ」という音が響き渡ってきた。その主は柿の木のてっぺんにいるジョウビタキの雄で、しきりに尾を打ち鳴らしているのだった。ジョウビタキというのはいろんな鳴き声を聞かせてくれる鳥なのだが、その日はただ尾を打ち鳴らすのみ。何のための行動かは分からないが時々に響く音にしばらく耳を傾けた。

季節を運ぶ

色鳥や視界の端を横切れり

2階の書斎にいたとき、視界の片隅をよぎるものがある。

行く先を確かめてから双眼鏡で確かめてみると、羽の部分にある特徴的な白三角形からジョウビタキの雄だと分かる。前の住まいからは既に先月目撃情報が寄せられているので驚くことではないが、やはり季節の鳥がこのようにして間近に見ることができるとうれしくなる。小さな鳥で色の美しいものを総称して「色鳥」というが、晩秋の季語になる。
そういえば大和川でもようやく緋鳥鴨の姿が増えてきた。冬鳥ウォッチングの季節到来だ。