高遠の桜

調度なき囲み屋敷の花疲

この週末は各地で桜まつり。

満開と祭が一致する年となったようである。
雨も朝のうちだけだったので、人出は多かったろう。
今までもいろいろな花を見てきたが、一番印象深かったのは、高遠の小彼岸桜だ。まず城自体は斜面に作られて大きなものではないが、濠と石垣がたくみに組合わされて攻めるには難しそうな要塞のようなものだ。登るたび行くたびに桜の景色に変化があって厳しい坂も苦にはならない。
桜を十分満喫したあと、城の下に再現された江島の囲み屋敷に寄ったことも桜の記憶とあいまって印象はより深いものとなった。
山深い場所だけに見頃の時期は中旬から20日前後だと聞く。
高遠から杖突峠へ出ての眺望もまた一流。信州の春はまたよいものだ。

乾通り

花に疲れ人に疲れて通り抜け

皇居の乾通りが開放されて多くの人が押しかけたようだ。

開放期間の5日間はちょうど花の満開時期にもぶつかり、手入れされた桜はさぞ見応えがあったに違いない。ただ、映像を見る限りでは花波よりは人波のほうがすさまじく、「人が多くて疲れた」というインタビューコメントもむべなるかなである。

とは言うものの、自分も以前のように関東に住んでいたならばせっかくの機会だからと駆けつけていたに違いないが。

題材

深よしののさらに深きの花疲

あらためて桜にちなむ季語は多いと思う。

ここ数日桜ばかりの句を詠んでるが、桜前線を追っていけば毎日のようにでも詠めるのではないだろうか。花にも咲きはじめあり、満開あり、散りはじめあり、落花あり。ひとところにとどまっても色んな角度から詠むことができるし。
なかなか奥深いところがあって、これはと思えるようなものにはなかなか巡り会うことができてない。日本人の精神構造にも深く関わりのある題材だけに、客観写生に徹した作句の力を養うには格好のテーマというものなんだが。