ミニカッパドキア

撮りたればお伽の家の茸かな
撮りたれば食ってみろよと言ふ茸
撮りたれば手にも採りたき茸かな

雨の日が続いてにょきにょき顔を出してきた。

櫟林の下草の間の、あちこちに珍しい形の茸がある。
ずんぐりとした胴のものもあれば、傘をおおきく反らせるようにしたやつ、どれも立派な傘をもっていて妖精たちのハウスのように見えてくる。
蹴散らされることなく目の前に造形の美しさを楽しませてくれたのはさいわいである。

村上春樹

白日や白き茸の生ふる道

不思議な景色だった。

川沿いの堤防の、日がよく当たる散歩道に、直径7,8センチほどまで育った茸が白く光っているのだった。夏の間誰も通ろうとしなかったせいか雑草も伸び放題で、おりしも勢いのいい葛の枝が今まさに径を覆おうとしていた。
茸のイメージというのは、木陰などで十分湿気があるような環境で育つというものだが、ここでは白昼炎熱にさらされて成長しているのだ。こういう種類もあるものかと自分に納得させるような思いで眺めていたが、なんとなく村上春樹の小説を読んでもいるような不思議な感覚にとらわれるのだった。