四面クマ

落蝉のつまめばぶると一度きり

この朝舗道に蝉が腹を見せて転がっていた。

そのままでは灼熱のコンクリートに焼かれて塵となるのも可哀想と思い、拾おうとしたらぶるっと一度だけ震えた。最後の力をふりしぼって抵抗したのだろう。そのまま手にのせて近くの茂みにそっと横たえてやった。鳥がめざとく見つけて持って行くかもしれないが、できれば五体が無事に土に還ることを願って。
今日も朝から顔の高さにも四面熊蝉だらけである。
この落ち蝉が今年初めて見る油蝉であったことになぜかほっとした。

風格

くまぜみの腹を見せずに落ちゐたる

さしものクマゼミも最後には地に落つる。

ゴーヤの棚にしがみついていたのか、最後の力もつきてその下に落ちていた。
さすが、蝉の王者らしく、腹見せて裏返るような無様な姿は見せない。
それにしても、王者がいっせいに消えたのに、油蝉の姿は全く見られない。駆逐されたと言うことだろうか。