郡山秋景色

昃りて藁塚影を失へり

大和郡山辺りも稲刈りが始まったようだ。

刈田の間に乾びた金魚田が点々とあるのはいかにも郡山の風情。
多くは機械で刈って細かく裁断された藁が散乱したままだが、なかには藁ぼっちを組んで干しているのもある。心棒を立て堆く組んで干すと言うより、乾けばすぐに回収できるように、束ねた藁を扇形に拡げてあるだけのものがほとんどである。畑の敷き藁に使ったり、庭木の保護などに使うのであろう。
高く組んだものは冬越しをさせて、堆肥などとして利用するため長期間その場で立っているのだが、化学肥料に頼るいまの農業ではそのような光景はもう珍しい。
簡易藁塚は年内に姿を消してしまうのが通例である。

煙りたなびく

藁塚の棒よりすでに傾ける

盆地を走ればまだ藁ぼっちを見ることがある。

藁にかわる便利なものがいろいろ開発されても、やはり稲藁でなくてはならないニーズもあるのだろう。
たとえば、霜除けの敷き藁などなど、わざわざ買わなくても自前で調達できるわけだし、なにより正月に欠かせない飾りもの、注連縄などである。
藁塚を組むほどではなくて、田に藁束を円錐形に広げて干している光景も少なからずある。
田仕舞いの煙が幾筋も流れる盆地は、いよいよ晩秋の色をふかめてゆく。