南へ帰る

ふじばかま咲いて南下の蝶の糧
長旅の蝶の寄る辺に藤袴

たいして広くない花畑に何種かの蝶が集まってきている。

なかでも、藤袴にはツマグロヒョウモン、赤立て揚羽、そして南国へ下る途上の浅葱マダラがしきりに蜜を吸っている。
これから数ヶ月かかけて台湾など南の国へ帰るための体力を養っているのだろう。あの小さな、そしていかにも儚げな翅でよくも荒海を越えてゆくものだと感心するが、行く先々でもまた、このように花畑に立ち寄っては栄養を補給することを繰り返して行くに違いない。

ここにもレッドリスト

ふじばかま叢としもなく名告り出で

この夏、雨が少なく気温も高かったせいだろうか。

白毫寺では九月の末になってようやく藤袴の蕾が膨らんできたが、その数が可哀想なくらい少ないと言う。もともと河原などで見られる植物なので、湿り気がほどほどあり、夜の気温も抑えられるような土地が適しているのだろう。
もはや自然に自生しているものが極端に減って準絶滅危惧種に指定されているうえ、異常気象などが続けばさらに危険にさらされることになる。

秋の七草に数えられていたのが、今では園芸店でくらいしか見られないというのは寂しい話である。